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自分で自分の首を絞めるパックインジャーナル

20111225

宇佐美 保

 

週刊金曜日(2011.9.2号)には次の記事が載っていました。

 

 潟eレビ朝日(早河津社長)は七月二九日、「朝日ニュースター」を運営する渇q星チャンネル(川原徹郎社長)から、CS放送事業を譲り受けることで大筋合意した、と発表した。……

 

 そうなるとどういう事態となるのでしょうか?

一昨日(?)、テレビ朝日の番組「報道ステーション」で、司会の古舘伊知郎氏が次のような発言をされました。

 

“夢で、この番組中、うっかり言ってはいけない「本音」を言ってしまいどうしようか?とオタオタした。夢であって欲しいんだが……”

 

 原発事件までは、舌鋒鋭く論じていた古舘氏も、原発への批判の矛先は真ん丸になっていましたので、私は“おやおや!?”と思っていましたが、“やっぱり!”と納得しました。

 

古舘氏にしてこうなのですから、テレビ朝日コメンテーターである川村晃司氏も推して知るべしです。

先の拙文≪川村晃司氏は東電の走狗に変身!?≫にも記述しましたが、川村氏は「東電発表」を「大本営発表」と見なすが如く、その「東電発表」を基にして、パックインジャーナル(「朝日ニュースター」の番組)中で(「脱原発」を訴えていた)菅さんへのバッシングを何度も繰り返して居られました。

 

それでも、今回の番組中、梓澤和幸氏(弁護士、山梨学院大学法科大学院教授)が、原発事故被害者のお気持ちを汲まれ、次のように発言されました。

 

庶民的な、被害者的な感覚からすると、先ず、東京電力が賠償出来ないという前に、この原発を進めて来た取締役の人たちが、一旦、全部自分の財産を、おそらくは5億円10億円という預金を持っていらっしゃるだろうから、そう言う預金を出して、福島の人たちを助けるべきですよ!非難されている方々は今や、職を探す元気すらないというのですから!

 

庶民の私は、梓澤和幸氏の発言は大賛成です。

この梓澤氏の見解こそが、東電賠償問題、責任問題の「初めの一歩」でなくてはなりません。

 法律云々の前に、心の問題です。
 自ら真っ先に責任を負う心構えなく高給を食むトップが君臨したのでは、弱肉強食の世界そのものです。

何故、梓澤氏のような意見がメディアから出されないのか不思議です。

 

 この梓澤氏の怒りの発言を裏付ける記事を『週刊文春(2011.12.22号)東京電力VS九州電力「ゴーマニズム宣言」』の記事に見ます。

その一部を次に引用させ得て頂きます。

 

 

未曾有の大震災によって、電力会社トップのゴーマンぶりが際立った。

 その代表格が東京電力の清水正孝前社長67)だ。

東日本大東災当日の行動について当初、東電は「財界人との会合のため出張中」と説明していたが、五月になって夫人同伴で奈良を観光していたことが毎日新聞で報じられた。

 震災対応の真っ只中の三月二十九日には、高血圧や目まいなどの理由で突如入院。家や家族を失った被災者が路頭に迷う中、東京・赤坂にある自宅の超高級マンションのローンをきっちり完済するなど、彼の行動は疑問だらけだった。

 四月には電事連の会長を辞め、六月には社長も辞任することになるのだが、「六月、十一人の顧問もリストラしたのですが、その後、清水氏は東電の顧問に就いたんです。先月には、リストラしたはずの顧問十一人のうち、二人が退任直後に再雇用されていることまで発覚しました」(ジャーナリスト)

 というから、東電の企業体賓には呆れるばかりだ。

 勝俣恒久会長71)もまた三月三十日の会見で、人災ではという問いに、「私自身は、まずさは感じていない

 と言い放ち、六月の株主総会では役員報酬の返還について「プライベートに関する事項」と突っぱねた

 「社長にリーダーシップがなく、すべて会長主導と言う点で、東電も九州電力も同じだといえます」(ジャーナリスト)……

 

 ところが、何と、愛川氏はこの発言を次のように受けながしました。

 

 梓澤さんの言う事は分かるんだけど、どっちかと言うと、役者の僕が言う情緒的なものを感じる。

 

 そして、議題を“「城南信用金庫」が、東電以外の電気を使っているそうだけど、どうしたら、その電気を私達が買えるんだろうか?”に持って行ってしまいました。

東電以外の電気を私達が買える為には、発送電分離が必要なことは、番組中の川村氏の発言を待つまでもありません。

 

 以前の愛川氏なら、“役者の僕が言う情緒的なものを感じる。”と言わず、“同感です!皆さんはいかがでしょうか?”と、或いは、梓澤さんの発言の前に愛川氏ご自身が“役者の僕が言うので、情緒的なものかもしれませんが……”との前置きの下、梓澤さん同様の発言をされて居られた筈です。

 

 愛川氏は、もうすっかり変わってしまわれたようです。

更に番組中、

“近々、役者に戻るつもりです”

旨も発言されました。

そして、常々、不思議だなあ〜〜!と思っているのは、愛川氏は次の発言を毎週のように繰り返していました。

 

視聴者の方々からのメール、ファックスは、私は見ないんです、出席の皆さんもそうなんです。

何しろ、番組前に読まして頂くと、そのメールなどから影響を受けたりしますので……

 

 番組終了後にも読まれておられないようです。

不思議ですよね、視聴者の方々の御見解に影響を受けてどこが悪いのでしょうか?

それでも、少なくとも番組終了後は、丁寧に目を通すべきではありませんか?

出席者(コメンテーター)の発言だけが、真実ではない筈です。

視聴者からも、コメンテーターの発言以外の多くの真実が提起されている筈です。

 

 番組前に、視聴者からのご意見を2、3通アナウンサーが読むことで、視聴者の不満のガス抜きを行っているみたいです。

 

 愛川氏は、故意に、こんな苦情が来るのを待って、身を引こうとお考えなのか?と勘繰らざるを得ません。

 

 

(補足)

 冒頭引用させて頂きました週刊金曜日(2011.9.2号)の記事の全文を掲げさせて頂きます。

 

CS放送の赤字子会社と社員を見捨てる『朝日』

 

 潟eレビ朝日(早河津社長)は七月二九日、「朝日ニュースター」を運営する渇q星チャンネル(川原徹郎社長)から、CS放送事業を譲り受けることで大筋合意した、と発表した。メディア企業の譲渡は初めて。翌日の『朝日新聞』は(現在のCS放送事業の「テレ朝チャンネル」に加え、来年41日から2チャンネル体制とする予定だ。/地上波やBS放送とも連携して番組を展開し、競争刀を強める狙い。/放送内容やチャンネル名などについては、テレビ朝日が今後検討するという)と短く報じたが、実は約八三%の株を持つ『朝日』のリストラなのだ。

 CS放送事業者としては老舗の衛星チャンネルは一九八九年一〇月に放送を開始し、視聴契約世帯は約五七〇万世帯に達しているという。放送開始前、『朝日』はこう書いた。(朝日新開、全国朝日放送(筆者注、現在のテレビ朝日)、電通、日本ケーブルテレビジョンなどが出資しており、名付けて情報分配会社。番組の目玉はニュースで、米国で24時間ニュースをCATVに流しているCNN(アトランタ)の日本版を登場させるのが狙い)(八六年六月一三日朝刊)

 ある事情通が指摘する。「毎年一億円ほどの赤字が続いているようです。『朝日』の体力から言えばどうってことのない数字だが、黒字化のめどがたたないから処分″することになったようですね」

 注目されるのが報道姿勢への影響だ。同局ファンはこう話す。「日本のCNNを目指したものの取材力が弱いためか、ニュース解説やトーク番組などが中心ですね。ただ『朝日』政治部出身の、現在の報道局長の度量が大きいらしく、地上波ではタブーである記者クラブ制度から、人気絶頂アイドルグループのAKB48、宝くじの批判まで、幅広く飛び出すのが面白い。

大震災以降は、東京電力や原発の問題点を批判し続けていますよ。

しかし、テレビ朝日の一部門になれば、こういった批判はできなくなるとみるのが自然でしょうね」

 311以降、政府の安全情報〃を検証せずに垂れ流す大メディアに疑問が高まっているが、今回の事業譲渡で、多種多様な情報への視聴者のアクセス権が減る可能性が高いというのだ。

 さらに別の問題がある。先の事情通が続ける。「出向組の社長と報道局長は『朝日』に戻りますが、残りの社員は全員リストラ。衛星チャンネルでは何らかの職は世話するというものの、まったく別の職種になる可能性も低くない。社員は不満たらたらですよ」

 衛星チャンネルでは「二〇一一年三月期まで純損益は六期連続の赤字。今後の設備投資の必要性や、多チャンネルマーケットの伸び悩み、ニュースチャンネル視聴の限界がはっきりしてきたこと、黒字転換が困難なことなどを総合的に判断した。譲渡後は会社としての事業活動を終了し、その後のことは検討中。正社員については、割増退職金の支給などを盛り込んだ希望退職を募集し、再就職支援については最大限の努刀をしている」と問い合わせに回答した。

 広告収入の激減で新聞・テレビとも経営難だが、経験豊富な人材の安易なリストラを進めたり、スポンサータブーが一層広がったりするとしたら、読者や視聴者がさらに離れるだけだろう。

       本誌メディア取材班

 

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